
気のおけない友人とおうちパーティー。
これほど気らくに楽しめるものもない。ギョーザに焼き鳥、コロッケにお寿司、ビールにワイン、ポテトチップスにケーキetc。それぞれが思いついたものを持ちよるから、テーブルの上はとりとめもなくバラエティ豊か。三ツ星レストランの、見た目もウルワシクステキな料理とは正反対、だが気取りのない楽しさということでは文句なしに五ツ星。笑い声をBGMに、他愛のないおしゃべりをメインディッシュに過ごす時間は、いいことばかりじゃない日々の中の、とっておきのひと時だったりする。
そんな“おうちパーティー”のようなアルバムが、辻香織の新作『Day by day』だ。フルアルバムとしては『光る海』以来の3年9ヶ月ぶり。前作のミニアルバム『夏風』から数えると1年7ヶ月、厳密に言うなら576日ぶり。けれどもその時間を上回る変化が、このアルバムには詰まっていた。例えばサウンドのアプローチも歌詞の切り口も、これまでに比べると間口は一気に広がり、彼女の新しい一面をサラリと見せている。
それも全く気負わず自然に。そこが、すごい。
「たしかにナチュラルになったかもしれない。だからレコーディングもすごく自由にやれて。
やりたいと思ったら、いいと思ったら、迷わずやっちゃってたんで(笑)結果、とんでもなくバラエティ豊かになってしまって。
もう途中で、これでまとまるんだろうかって心配になったくらいでした(笑)」
自由になったのは、自身のレーベル“KAOMISE Record”を立ち上げたことが大きい。
ゼロからのスタートは不安も問題も山のようにあったそうだが、「このままライブだけやり続けていて、いいんだろうか・・・。
よくない!!」という気持ちで始めたことだけに、すべて自分発で進めていける状況はむしろ爽快であったらしい。
「とにかく何をやるにしても風とおしがいいので、問題も見えやすくて。
見えないことからくるストレスもないし。あとはおかしな話ですけど、今回、初めて自分で作ろうと思って
アルバムを作ったんですね。
前は周りから『そろそろ作らないと』とか言われて、どうゆうものを作ろうかって考えることが多かったんですけど。
今回は自分が動かないと、何も形にならなかったから。そういう主体性みたいなものも、
アルバムには表れているかもしれませんね」
それにしてもこのアルバムの収録曲は、いずれも個性豊かだ。
ちょっとREMを彷彿とさせられるミディアムのロックチューン『東京夜景』、
ギター・ポップな感じが耳に心地いい『Hitsuji Poo』、どこか童謡の匂いがするアコースティックな『エコうた』、
浅草生まれの面目踊如といった『祭りRock!』、
ジャジーな雰囲気のシンプルなラブソング『三日月』など・・・。
意外さと驚きと新鮮さに満ちた10曲が、次から次へと繰り出されていく。
「いい意味で自由になれた気がしますね。歌詞にしても、前はもう少し抽象的だったと思うんですけど、
なんか今回、気づいたらわりと直接的に言ってるものが増えてて。
そういう変化も含めて、“日々”の感じがするなぁと思って。で、それが出たアルバムを作れたことが、
今、とっても嬉しいんです」
すべて自分しだいだから、やりがいがある。
ゆっくりでも、自分のペースでやっていけることが嬉しい。そう言う辻香織のこれから。
十分に期待していいに違いない。
ライター/前原雅子
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